毎年、この寒い時期に大学で催される"Jazz Weekend" は1974年からの恒例行事で、今年で38回目を迎える。大学でジャズを学んでいる学生が中心となり、キャンパスで1日じゅうジャズコンサートが開かれるのと同時に、ミシガンじゅうのハイクールのジャズバンドの大会が開かれるため、州内からジャズミュージシャンの卵がぞくぞくと押し寄せる。
地元ということもあり、末息子がハイスクールでジャズバンドに参加するようになった2007年からこのイベントを楽しみにしてきた。今年のゲストアーティストは、サックス奏者のボブ・ミンツァー(Bob Mintzer)で、大学のなかにいくつかあるジャズバンドの中でも、JAZZ LAB1だけが’ゲストアーティストと共演でき、フレッシュマンの息子は光栄にもこのチャンスを得た。
共演するにあたり、練習はしてきたものの、Bobを迎えてのリハーサルは、本番の前夜の10時から夜中までのみ。たった一度のリハーサルでうまく出来るのかと心配になるが、プロの世界ではあたりまえのことなのだろう。
会場はイベント参加のためにやって来たハイスクールの生徒や地元のジャズ愛好家で満員だった。昨年は日本に帰国していてこの演奏会を見逃したものの、それまでは欠かさず楽しんできた。しかし、これまでとちがうのは、今年は息子が演奏する側にいるのだから、観客でありながら、自分のことのように緊張……。
演奏曲はもちろんボブ・ミンツァーの曲ばかりだが、どれもこれも難易度の高そうなものばかり。”Swangalang”では息子のトランペットソロもあり、舞台の向こうで気持ちよさそうに曲の中に入り込んで演奏している息子をよそに、私は手に汗が……。それでも大きな拍手をもらいほっとした。
ジャズが好きな私が、近所で朝からジャズずくめの1日を楽しめたのは良かったけど、何より感慨深かったのは、活躍した学生たちに地元ハイスクールのジャズバンドから巣立っていった子が6人もいたこと。なにしろ、過去数年まえにさかのぼり、体がひとまわり小さい頃から見守ってきた子たちなのだから、その成長ぶりを見るのはうれしい。
特に今年は、ハードルの高いJAZZ LAB1に、同時に2007,2009,2010年の卒業生3人が所属しているのだから、とても珍しいことだと思う。ハイスクールで彼らを育ててきた先生も、舞台で活躍する教え子の晴れ舞台に目を細め、コンサート終了後には、激励の言葉をかけにうれしそうに舞台にあがっていた。その様子を見るのは、親として感動的だった。
息子も、もしこの先生に出会っていなければ、別の人生を歩んでいたかもしれないのだから……。そう考えると人との出会いとか縁ってほんとに不思議であり大切なものだと思う。